「いつになったらフロア入ってくれるの?」


相変わらず店長の癖にバイトに強く言えない店長が現れて、私のテンションは一気に滝登りした。


「店長! 私のこと迎えに来てくれたんですか!?」

「お、小野さん!?」


勢いよく椅子から立ち上がって駆け寄った私に店長は私に触れないようにと両手を上に持ち上げた。まるで追い詰められた犯人が観念した様子のようだ。
他のメンバーは「また始まったか」とありきたりなその光景を冷めた目で見つめていた。


「と、ところで皆何やってたの」

「勉強ですよ、試験近いんで」

「あ、あぁ……」


そうだね小野さん高校生だったね、と店長は少し困ったように笑った。今にでも泣き出しそう。


「店長、小野の学校流谷なんですって」

「え、知ってるよ? バイト面接受けたときに聞いたし。頭いいよね」

「やだなぁー、店長ってば褒めすぎ」

「いや、頭いいって言っただけだろうが。勘違いしすぎだ」


はぁと溜息を漏らす紅先輩の頭に蒼先輩のチョップが下る。

あ、そうだ!


「店長も勉強教えてください!」

「え、俺? 無理だよ、高校なんて何年前だと思ってるの」

「十一年前」


何だっけ、と考える前に花宮さんがそう発する。