私が「もうやめてください」と懇願すると蒼先輩が何故か「すみません」と声を漏らす。


「ただ吃驚しちゃって。流谷なんかウチの学校よりも偏差値遥かに上ですから」

「え、蒼先輩頭いいとこ通ってるんじゃ」

「俺は紅と同じところ通ってるんですよ」


頭いいわけないじゃないですか、と私が頭がいいとちやほやされていたのが気にくわなかったのか、暇そうにしていた紅先輩は今の蒼先輩の言葉に跳ね起きた。


「はぁ!? 俺のせいかよ!」

「そうだよ、紅がどっか学校入れるように中学のとき自分の勉強時間省いて教えてたでしょ。紅、塾に入れても直ぐに逃げ出すし、サボるし。あと高校で何かあったら困るから紅のこと見張ってるんですよ」


そう答える蒼先輩に紅先輩は「余計なお世話だ!」とバンッとテーブルを強く叩いた。蒼先輩も大変だなぁ。


「ところで桐谷先輩、何でいきなり学校なんか」

「あぁ、この問題集やけに難しいから。高一にさせるレベルじゃないなって」

「あ、やっぱり難しいんですか!」


私の勘違いじゃなかったんだ! てっきり私が馬鹿だから頭に入ってこないのだとばかり。

すると、


「あのー、君たち?」


後ろの方からそんな弱々しい声が聞こえてきてその場にいた全員がそっちの方向を見るとその人は怯えるようにビクッと体を反応させた。