「でも、一応連絡はしておいたら?」

「い、いいんです! 私が帰ってきたのも分かってないような人たちなんで!」

「……」


それって、と店長に追求されそうになったその時目の前に駅の看板が見えたので「ここでいいです!」と車を止めた。


「え、家まで送っていくけど」

「いいですよ~、余裕で電車あるんで。店長も帰ったらまだお仕事残ってるんですよね?」

「……そうだけど」


私は名残惜しくも店長の車を降りるとありがとうございましたと頭を下げる。
そして脚を駅の方へと掛けると、振り返り店長に向かって大きく手を振った。


「店長~! おやすみなさい~! 大好きですよ~!」

「ちょ……駄目!」


声が大きいよ!と青ざめながら周りをキョロキョロと見回す店長の様子にケラケラと笑う。
人が多い駅前では本当に控えてほしいのだろう。私は沢山の人の目を奪いながら駅の中へ足を進めた。

すると、


「小野さん! 連絡!」

「っ……」

「してね!」


振り向くと彼が窓から必死に伝えようとしているのが見えて自然と口角を上げると、「はい!」と元気よく返事をした。




その日の夜、


『店長今日は送ってくださってありがとうございました! 早速メール送っちゃいますね! 店長の車の助手席に乗れるなんてまるで彼女気分でした~。きっと私が大きくなったらドライブデートに連れてあってくれるんですよね!? そうなんですよね?!? 私も無事家に着きまして今日の店長とのことを思い返しております。今日はバイト中店長が店にいなくて凄く寂しかったです~~!! 私も深夜まで店長といたいので早く成人して深夜シフトを取ろうと思います!!!! ところで店長のお好きな食べ物ってなんですか?今度是非……』


そっとスマホの電源を落とした店長でした。