取り合えず乗りなさい、と促され私は戸惑いながらも助手席のドアを開けた。
店長、私のために車飛ばしてきてくれたんだ。なんか、嬉しいな、それは。
初めて乗った店長の車はなかなかの乗り心地だ。
「これ、店長の車ですか?」
「そうだよ、」
「高そうですね」
「……」
そうかな、と店長は苦笑した。チェーン店の店長をしていればここまで稼げるものだろうか。私には良く分からないけど。もしかすると店長は車に熱を注ぐタイプなのかもしれないし。
は! 車の助手席に座ったということは店長の運転姿も見られるし最高ってことじゃない!?
「店長! 流し目! こっちに向けて!」
「事故るから運転に集中するね」
「えー、けち」
ブーブーと愚痴を言うと「何で俺が怒られるの……」とまた彼は困ったように呟いた。
夜一人で帰るのは危ないからってきてくれた人にケチケチと言っているのに、店長は本当に怒らないな。紳士みたいだ。
私がそんな店長のことを見つめていると赤信号に捕まったとき、彼は私の方へ一枚の紙切れを渡した。
何だろう、と開けばそこには番号やらアルファベットが陳列している。
これってもしかして、
「俺の連絡先」
「……」
え!?、と目を店長に戻す。