そんなの絶対に嫌だ!! せめて、せめて最後に店長の顔だけ見せてほしい。
そう願ったからか、停車した車の運転席の窓が開き、中から出てきたのは見覚えのある顔だった。


「こんなところで何してるの? 小野さん」

「……てん、ちょ……」


少し困ったような顔でこちらを見つめる店長がそこにはいたのだ。
車の運転手が店長だと分かると私は脱力すると共に熱が顔中心に集まった。

「バカ店長! 驚かせないでください!!」

「ええ!? ご、ごめんね……」


慌てたように店長の車に駆け寄る。本当に吃驚した、このまま連れ去られるのかと思った。
私がこんな風に怒ったのは初めてだったからか、店長も少し戸惑っているようだ。

だけどこんなところで何をしているんだろう。そんな疑問を彼にぶつけると店長は心配そうな顔で話しかけてきた。


「小野さんが一人で帰ったって話聞いてさ、危ないから送っていこうと思ったんだけど……というか小野さんこそなんでこんな道歩いてるの? もしかして迷子?」

「え、えっと……はい、店長との愛の迷路に迷い中です」

「う、上手くないからね」