ちなみに私も店長のことを舐めて掛かってますからね!、と言われてどう反応していいか分からなかった。
というか花宮さんどうしたんだろうか、俺に何か用事があって来たんだろうけど。もしかして俺のこと傷付けにきたのかなぁ。相当嫌われている気もするし、そうであってもおかしくない。


「ところで店長、何で小野に連絡先教えないんですか?」

「っ……ゴフッ」


飲んでいた珈琲がどこか変な器官へ入り、ゴホゴホッと咳き込んだ。
小野に聞きました、と言う花宮さんを焦ったように見つめると彼女は呆れた表情を浮かべる。


「連絡先ぐらいいいじゃないですか。中学生じゃあるまいし」

「え、とね……」


連絡を教えるのを断ったのにはちゃんと理由があるのに。しかし彼女は厳しい目付きを俺に向けるのをやめない。
あぁ、何で俺歳下の女の子にこんなに責められているんだろう。


「というか他の従業員の誰にも教えてないんですか? 私が知りたいって言っても?」

「いや、教えるけど……」

「じゃあ俺にも教えてください」

「き、桐谷くん!?」


急に入ってきた桐谷くんはスマホを出すと「お願いします」と言った。
どうやら休憩室の忘れ物を取りに来たついでらしい。


「店長が店にいないときに困るんで。他の連絡先も知らないし」