というかそれより、


「盗聴機ですか!?」

「あー、すみません。全部忘れてください、紅が言ったことは」

「あれは怖かったよなー。この俺様でさえも肝を冷やしぜ。どの女が渡してきたか分かんないから犯人特定出来なかったんだっけ?」


殴られても尚個人情報をペラペラと口にする紅先輩に、流石に仏の蒼先輩の表情も曇っていく。
なんとなく分かる、蒼先輩は怒らせたら駄目なタイプの人だ。


「お前さ……」

「い、いや、私何も聞いてないですよ!」


ワタシナニモキイテナイヨ!

そんなこんなで、私が持っていたラブレターは蒼先輩のファンのお客様からいただいたものであり、私はいつもその処理に困っていた蒼先輩を知っているから渡そうかどうか迷っていたのである。


「なんで蒼はモテんのに俺はモテねぇんだろ。同じ顔なのに……」

「え、それは……」


貴方の性格が……、とはなかなか言い出しにくかった。

今月で何通目だろう。よくこの双子目当てで来るお客さんがいたがこういう差し入れものが増えたのは本当にここ最近のことであった。
一人がやり始めるとその噂が広がり次から次へと増えていった。初めは丁寧に対応していた蒼先輩だがさっきのこともあってか、もう手がつけられない状態なのだろう。


「ていうかさ、さっさと開けろよ」

「あ、ちょっ……」


紅先輩は蒼先輩が持っていたそれを奪い取り、ビリビリと便箋を剥がした。あぁ、この人にデリカシーってものを誰か教えてください。
人の手紙勝手に読むなよ……、と流石の兄弟の蒼先輩も呆れ顔だった。

あれよあれよと中身を取り出すとそれは手紙ではなく一枚のカード。
隣に立っていた蒼先輩が「爆破物かもしれないから気を付けて」と紅先輩に声をかけていた。そういう発想になる彼の方が私はなんだか怖い。


「"良かったらこちらに連絡をください"?」


紅先輩が読み上げた文章に私と蒼先輩が顔を見合わせる。
そして今度は紅先輩から蒼先輩が「貸して」とそれを奪い取った。奪い返した、の方が正しいだろうか。

そのカードをじーっと見つめる蒼先輩はどこか怒りを隠しているように見えた。
どうかしたんですか?、と聞くと彼は私にもそれを渡してきたため、じっくりと中身を確認する。

そこには『良かったらこちらに連絡をください』と可愛い文字で書かれた文章があり、その下にはこのラブレターの差出人であろう女の子の電話番号とメアド、LINEのIDまでが書かれていた。