これ以上何を言っても彼が靡くことはないだろう。ここは当初の計画を改めて、長期戦で掛かる方がいいかもしれない。


「分かりました。でも必ず店長が手を出したくなるような女性に成長してみせますから! 絶対に待っててくださいね!」

「や、やっぱりそうなるか……」

「絶対店長の方から好きって言わせてみせるので!」


そうして店長は私を邪見に扱ったことを後で後悔すればいいんだ。


「……本当、小野さんには吃驚させられるな」

「え?」

「何でもないよ。ほら、そろそろ着替えてきた方がいいんじゃない? 早く来たって言ったってもうシフト入る時間でしょ」

「わ、本当だ!」


フロアに出る為には更衣室に戻ってお店の制服に着替えなければならない。
そんな私を送り出すためか、彼は今日会って初めて満面の笑みを私に向けてくれた。


「小野さん、今日も頑張ってね」

「っ……」


結局、私は店長の笑顔を見られたら、それだけで他のことはどうでもよくなってしまうくらい幸せになれる。
彼に笑いかけてもらえるだけでアルバイトの給料はいらない、なんて言ってしまったら他の人に申し訳ないのだけど。

だけど私が一生懸命に働くことでこの店の店長である彼の為になるはず。
そう信じて、私は今日もここ、ファミリーレストラン『JOY STREET』のフロアに立つのだ。


「(店長が私振り向いてくれるまで……)」


これは“私たち”、ファミレスで働くアルバイトメンバーと、そんな私たちに振り回され続けるファミレスの店長の物語。