それって……
「このために花宮さんに頼んで小野さん呼んでもらって、桐谷くんにレシピ聞いて、他の人にも休憩室に立ち寄らないようにしてもらってって……俺、本当に情けないよな……」
「自分で言ったらおしまいです」
だけど、私のためにいろんな人に頼んだんだろうな。なんだか、今はその気持ちだけで。
色々あったけれど、だけど私もこのまま店長と上手く話せなくなるのは嫌だ。
店長、と声を掛けると私も彼の目を見つめた。
「いいんですか? 私、きっとまた店長に同じことをしちゃうかもしれないかもしれないです」
「それは……もう少し控えめにしてくれるなら」
「好きって沢山言ってもいいですか?」
「と、時と場所を考えてくれたら……」
「オムライス食べてもいいですか?」
「……うん、どうぞ」
そう言われて口にしたオムライス。桐谷先輩からレシピを教わったとあって、見た目は歪だったけれど、口の中に入れた瞬間卵がとろけて美味しかった。
私の為に店長が作ってくれたオムライス。今まで食べたオムライスの中で一番美味しい。
「そういえば変なことしたら私のこと傷付けるかもって言ってましたけど、あれってどういう意味だったんですか?」
「……そのことは忘れていいよ」
店長はご飯を頬張る私を眺めながらふわっと柔らかく笑った。
「俺が君を傷付けることはないから。約束する」
「はぁ……あ、オムライス美味しいです!」
「よかった」
「で、いつ私に手を出してくれるんですか?」
「っ!?」
大きく目を見張った店長は私の言葉に「困ったな」と眉をひそめた。
きっと店長は私のことを好きになることはないだろう。だけど嫌いになることもきっとない。
私はゆっくり大人になるけれど、店長はそんな私のことを待っていてくれる?
「(絶対に追いついてみせますから……)」
そうしたら今度は私が、店長に美味しいオムライスを作りますからね。