例えば、常に店長があんな感じていたら周りの女の人はみんな彼のことを好きになってしまう。
少し色っぽくて、今とは全然雰囲気は違うけど……私はあっちの店長も好き。

私きっと店長ならなんでも好き。

休憩室に入ると期待したテーブルの上には何も置かれていなかった。あれ、おかしいな。まだ準備できてないのかも。
ゆっくりと席に腰を下ろした私は桐谷先輩の到着を待つ。というかなんだか様子がおかしいような。この時間帯の休憩、私一人だけ?

他にも休憩被っている人いたはずなのに、と思ったその時コンコンと休憩室の扉をノックされ、私は反射的に「どうぞ」と答えた。


「小野さん?」

「っ……」


顔を覗かせたのは桐谷先輩ではなくて店長だった。
私は彼を見ると直ぐ様腰を上げ、休憩室を出ていこうとする。そんな私に「待って!」と声を掛けた店長に止まってしまう私の足。

また、「待って」って言った。どうして今日はずっと私のことを引き留めようとするの?
だってもう店長に近付いたら駄目なんでしょう? 好きって言ったら駄目なんでしょう?

店長は休憩室に入ってくると何か言いたげな表情を浮かべる。


「あのさ、小野さんに話したいことがあって……」

「話したいこと?」

「とりあえず、これ」


そう言って、彼がテーブルの上に置いたのは店で出てくるメニューの一つのオムライスだった。
え、と私はテーブルに近づくとそのオムライスを上から覗き込む。そこには赤いケチャップで文字が書かれていた。