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「小野、休憩交代」


そう休憩から戻ってきた花宮さんに呼び掛けられ私は元気なしに「はい」と返事をする。


「どうしたの、元気ないわね」

「ここ最近、店長に一回も抱き着けてないんです……」

「ここ最近って、一回でも抱き着けたことあったの?」

「追い打ちかけないで下さいよ、花宮さん!」


だけどここにいたら嫌でも店長に絡んでしまう自分が嫌! だって今まで条件反射のように店長がいたらアタックしていたんだもん。今更それをやめろと言われても。
どうしたら、と一人頭を抱えていると花宮さんは「頭を休ませてきなさい」と休憩を交代してくれた。

そして私がフロアから離れようとすると彼女が「あー、そうだ」と思い出したように言う。


「今日、夜シフトでしょ? 桐谷が休憩室にまかない用意してくれてるから」

「はーい」


やった、今日まかないあるんだ。桐谷先輩の作るご飯、いつも美味しんだよな。
空いたお腹を満たすため休憩室に向かう途中、気になってお店の事務室を覗いてみたが店長の姿はなかった。


「(店長……)」


いつもの優しくて、紳士で、愛くるしい笑顔じゃなくて、捕まれた腕の強さとか、体を引き寄せられたときとか、大きな口とか、視線とか、言葉も……

全部、知らない男の人みたい……

だけど、


「格好よかったな……」