『今度は本当に小野さんのことを傷付けるかもしれない』


私を傷付けるって、どういう意味なんだろう。


『もう、どうなっても知らないからね』


店長が私の触れた時の熱が忘れられない。あのまま店長に食べられてしまうんじゃないかと思ったくらいに背中がゾクゾクとした。
あの時、店長は私に何をしようとしていたのかな。キス、なのかな。店長と私が、キス……?


「っ……うぅ~」


ガンッと煩悩が詰まった頭を更衣室のロッカー扉に打ち付ける。妄想だけでここまで私を苦しめるとは、店長侮れぬ。
いやでも、まさかね。店長が本気で私なんて子供の相手にするはずなんかない。

でも、


『今みたいに身体を好き勝手触られて、普通の男なら耐えられてないから』


店長がああいうってことは、店長も我慢が出来なかったということなのだろうか。

更衣室の外に出ると女子更衣室の隣にある男子更衣室の扉を見つめた。あれから、普段は女子更衣室のみに付けられていた鍵が男子の方にも付けられた。
私仕様か、いや、毎回店長狙って入るほど変態じゃないんだけど。

廊下に出てフロアに向かうとそこには見慣れたその細い後ろ姿。相変わらず後ろから蹴りを入れたらポキッと折れてしまいそうに細い。
だけど実はシャツの中の体は外から見るよりもしっかりしていて……


「てっ……」


店長!といつものように抱き着きに走り、そして止まる。この前言われたことを色々思い返してしまったからだ。
ヤバい、次こんなことをしたら怒られるんだった!