私は溢れた珈琲を全て拭き取るとそっと彼の見えないところで微笑んだ。
なんだ、私が思っていたいたよりも店長って全然大人じゃないんだな。


「店長」

「は、はい」

「あと五年待てば何の問題もなくなりますよ」


今私に出来る助言はこれが限界かな。だけどきっとそう遠くない未来のような気がする。
私、思っていたよりもこの二人がくっつくところを見てみたいのかもしれない。


「あ、はは。その間にきっと小野さんには素敵な彼氏が出来ると思うよ」

「いやー、ああいうタイプは結構ねちっこいですよ」


あぁ、なんてかわいそうな店長なんだ。女子高生に好かれてしまったのが運のつきだな。
私は布巾を洗おうと厨房に向かう途中、最後にテーブルで項垂れている我がファミレスの店長に声を掛けた。


「大丈夫です、好物は後で残しておく方がきっと美味しくなりますよ」


ショートケーキの苺のように、そう言えば彼の顔は一気に赤面し、そしてまた「うーん」と項垂れた。
一人の女子高生に惑わされる上司の姿はなんとも情けないのだが、


「（でもまあ……）」


私がここを出て行くまでには、少しでも二人の距離が縮まっているといいな。


「ちなみに店長って小野が成人するとき何歳なんですか？」

「は、花宮さんって結構他方から抉ってくるよねえ……」


いや、もう少し追い込めばもっと面白いものが見れるかもしれない。