「花宮さん! この子どうにかして! 君バイトチーフでしょ!」

「いや、あなたこの店の店長でしょ」

「そ、そうでした……」


犬も食わないやりとりに花宮さんは「もうやってられない」と飲み終わった紙コップをゴミ箱に捨ててスタッフルームを後にする。
邪魔者がいなくなったところが更にずずいと彼と距離を縮める。ここまで来たらもうJKブランドを捨てて、私自身を店長に好きになってもらうしかない。


「店長、私本気なんです。本気で店長のことが好きです」

「小野さん……気持ちは嬉しいよ? だけど『何をされてもいい』なんてそう簡単に男に言っちゃ駄目だ」

「だって本当のことだから……」


それに誰にでも言うわけではない。相手が店長だから、覚悟して口にしている。
だけど彼は私の心配ばかりで私の気持ちを真剣には受け取ってはくれない。これが大人と子供の境界線なのだろうか。


「じゃ、じゃあ私が高校を卒業したら付き合ってくれますか?」

「う、うーん、どうだろう……」

「それじゃあ20歳になったらどうですか!?」

「……その歳になったら、きっと小野さんには素敵な彼氏が出来てると思うよ。それに俺、小野さんが20歳になる頃にはもうおじさんだし」

「そんなことありません!」


今こんなに好きなのに、この熱量が消えることなんて想像がつかない。
しかし私を諭すように店長には私の声は届いていないらしく、「そうだと嬉しいなあ」と少し寂しそうに微笑んだ。