「店長がそれなら私は何も言わないですけど。でもあの子を勘違いさせるようなことをしたら、小野はもう後戻りできなくなりますよ」

「……それは」

「小野を本当に傷付けたくないんだったらこのままあの子と向き合うか、それとも手っ取り早く突き放すかしかないですよ」


少し冷たいかな、なんて思ったけれどこの人が自分の意思を持たないように、流されやすいところを利用させて貰う。だって、そっちの方が面白い。
それでも彼が「でも俺と小野さんは歳が……」言い訳を続けようとしたので私はそこに楯突くように言葉を放った。


「もしかして店長、歳の差を理由にしてません?」


それがあまりにも図星過ぎたのか彼は「ち、ちが……」と席を立った勢いで目の前の珈琲が入った紙コップを倒してしまった。
テーブルの上に広がる茶色い液体。彼は慌てたように紙コップを立たせると私は布巾でそれを拭く。


「冷めててよかったですね」

「あ、うん……ありがとう」

「あと、動揺しすぎです」

「っ……うん」


ごめん、と苦しそうな表情を浮かべている店長のことを見て漸く悟る。
引き返せないところまで来てるのは小野じゃなくて店長の方なのか。