彼の口から出てきた行為に驚きのあまり大声を上げると部屋中に私の声が響き渡る。
店長は「違うってば!」と更に大声を重ねて私の声を遮る。良かった、部屋に他の人がいなくて。


「ちょっと脅しただけで本当にはしてないよ。そうしないと離れてくれなさそうだったから」

「裸っていうのは?」

「上だけだよ、下はちゃんと履いてたよ。俺が更衣室で着替えている間に小野さんが入ってきたんだよ。それは、一応事故だったから仕方がなかったんだけど」


それで小野さんに襲われて、と当時のことを思い出しながら説明をする彼。それを聞くとあの小野ならしそうだなって思ってしまうところ少し悲しい。
なるほど、つまりいつも通り小野が調子に乗って店長のことをからかった結果、彼の我慢が利かなくなりキスするふりで脅したってことか。


「正直、俺も一杯一杯でよく覚えてない。だけどどうして小野さんって裸の男にあんなにべたべたできるんだろう。危なすぎる」

「男っていうか、多分店長にしかやらないと思いますよ」


あの子は、と付け足すと店長はゆっくりとこちらに視線を向ける。その視線は戸惑いに満ちていた。
その表情に私はまさかと思うと、恐る恐る彼に尋ねる。


「もしかして、店長……小野が自分のこと好きって、本気で思ってなかったんですか?」

「え、いやだって……普通に考えてそれは……」