しかし私以上に感情を爆発されたのは店長だった。


「あーもう! 酷いのは小野さんじゃないか!」

「へ?」



わた、し?

店長は私と距離を開けながらも真っすぐにこちらを見据えている。


「小野さんはもっと男がどんなものかを知った方がいい」

「店長?」

「今みたいに身体を好き勝手触られて、普通の男なら耐えられてないから」


店長は自分の顔が熱いのが気になるのか、何度も手のひらで頰を拭う。

そして、


「俺だからって安心してるかもしれないけど……次同じようなことをして来たら、今度は本当に小野さんのことを傷付けるかもしれない」


落ち着いたら戻ってきて、と言い残して店長は更衣室から出ていった。
私は今の出来事に収集がつかなくて思わず膝の力が抜けるようにその場に崩れ落ちた。


『今度は本当に小野さんのことを傷付けるかもしれない』


何度も頭の中で繰り返される彼の台詞。あぁ、怖い。怖いのに、彼に傷物にされたいという願望が溢れて止まらなくなる。

全部、全部、熱になる。


「(どうしよう……)」


あぁ、好きがこんなに怖いだなんて。