そう、思っていたのに……


「いいの?」


返ってきた低いトーンの声が薄暗く静かな空間に響いた。それと同時に彼は私の腕を掴むと体をコンクリートの壁へと押し付ける。
セーラー服の薄い生地の後ろからコンクリートの壁の冷たさが伝わってくる。彼は真上から私のことを見下ろしていた。

こ、これは巷で有名な『壁ドン』というものなのでは!?

さっきまでの赤面していた彼の姿は無かった。真剣な表情で私のことを見下ろしている店長の姿に思わず唾をごくりと飲み込む。

と、


「あれだけ忠告したのに、どうして言うことを聞いてくれないの」

「……店長?」


今私の前にいるのは、店長? だけど普段の優しい雰囲気は全く感じられなかった。
初めて見た彼の真顔に純粋に恐怖が脚から這い上がってくる。逃げたい、けれど彼に身体を押さえつけられているせいで身体を動かせない。


「本当に小野さんが俺に触った分、俺も小野さんに触れていいの?」

「っ……」


待って、私どれだけ店長に触った? 腰とか胸とかお腹とか凄い触っちゃった記憶あるんだけど。
彼の熱い視線が制服の私を下から上までを舐めるように見つめた。