「あのね、もし小野さんが俺にこんな風に触られたら嫌でしょ?」

「全然!」


私の返事に店長は「え!?」と目を見開く。


「ぎゃ、逆に……触って欲しいです、私は」

「……」


何を言ってるんだろう、でも口が勝手に。でも間違いを口にしているわけでもないし。
やっぱり私は痴女なのかもしれない。変態なのかもしれない。店長に対してはそうなのかもしれない。

彼の顔を見つめれば、やはり店長は赤い顔をして照れていた。あぁ、またそんな顔が私の心を擽るんだ。
桐谷先輩の言葉を思い出す。押し倒してキスでもすればいい。きっとそんな勇気私にはないけれど、それくらいもっとぐいぐい行けということなのかもしれない。
押して


「わ、私は怒りませんよ。店長に何をされても」

「小野さん、何を言って……」

「だから私が店長に触れる分、店長も私に触れて貰っても構わないんで!」


これならお互い様で店長も私に触られることに抵抗ないのでは?とは思ってみたものの、振り返ってみるととんでもない発言をしてしまったことに気が付く。
触れられるって、今手を握られているだけでこんなにドキドキしているのに私の心臓は持つんだろうか。

でも店長のことだし、きっと断るはず。