しかしその効果も長くは続かなく、彼は私を諭すように鋭い視線で見つめる。


「お、男の人の体触っちゃ駄目!」

「なんでですか! ちょっとぐらいいいじゃないですか! ケチ!」

「ちょっとぐらいじゃなかったよね!?」


真っ赤な顔をしている彼につられるように私の顔を赤く染めた。店長に手を握られているからだ。
相変わらず自分からは迫るくせに、向こうから触れられると謎に意識してしまう。

あーもう、と彼は困ったように自分の目元を私の手を握っていない方の手で覆う。
彼の襟足の長い黒髪が首筋に掛かっているのを見てぎゅっと締め付けられる私の心臓。やっぱり、こんなことでときめく私は変な性癖を持っているのかもしれない。

不意に店長の体に視線を戻す。やはり前から見ても立派な体だ。いつもの店長じゃないみたい。


「(まだ誰も入ってこないよね?)」


いけないことだと分かっているのに、彼に近付きたいと思う気持ちが収まらない。


「どうして、触っちゃ駄目なんですか?」


そう問い質すと彼の瞳が静かに揺れた。店長は少し戸惑いながら目を泳がせると勿体振った口調で言う。