花宮さんがなにかを言いかけたので黙ってみていると彼女は口を開きかけて、やめた。


「いや、私が聞くことじゃないかもしれないです。なんか余計なお世話かもしれないし」

「え？　なになに？」

「気にしないでください。ただ……」


そう呟いた彼女は一息ついたあとに言葉を紡いだ。


「小野に嘘を言うのだけはやめてくださいね。あの子、店長に関しては盲目というか
、盲信というか……」

「……」

「多分店長に傷つけられたら、あの子立ち直れなくなります」


どこか申し訳なさそうにそう告げる花宮さんの表情は辛く、彼女自身もここ最近店での小野さんの様子がおかしいことに気が付いてるようだった。
小野さんと花宮さんの関係性を見ると、もしかすると小野さんからの相談を受けている可能性もある。


「なんて、店長が小野のこと振ったら当たり前に傷付くんですけどね。こういうのも野暮ってやつなんですかねー」

「うっ……」

「でも店長は“大人”ですから。上手くやってくれますよね？」


まるで釘を指すように言った彼女の表情は普段通り余裕のある笑みを浮かべている。他人にプレッシャーを与えるのが上手な人だ。