最近、小野さんの元気がないように見える。きっと恵が店に訪れてからだ。
何故か彼女が接触するのは小野さんであることが多く、なにを言ってたのかは知らないが想像するにきっとろくでもないことだろう。
小野さんは聡い子だ。俺と恵の関係についてはなんとなく想像はついている気がする。
『優しいのが、店長ですよね?』
優しいと、自分がそう評される日が来るとは思っていなかった。
「……ちょう、店長」
「っ……」
聞こえた声に我に返るとすぐ横に花宮さんが立っており、その気配のなさに思わず座っていた椅子から立ち上がってしまった。
「び、吃驚した……! 花宮さんいつからいたの?」
「いつからって、ずっとここにいましたよ。店長の意識が飛んでたんじゃないですか?」
「そ、そうかな。ごめんね……」
考えごとをすると集中して周りが見えなくなるのは悪い癖だな。
花宮さんは「来月のシフトです」と手元の紙切れを手渡してくる。
学生アルバイトだと彼女は必ず最後にシフトを出してくる。ほかの子のシフトを見て人が足らなくなる日がないようにと調整してくれているのだろう。
こういうところが彼女がバイトリーダーに選ばれた理由なんだろうと感じる。
「ありがとう。いつもまとめてくれて助かってるよ」
「……店長って、」
「ん?」