派手で高そうな身なりだったから店長の雰囲気と釣り合わないところとか、それが余計に私の知らない繋がりに見えたり、女性の名前を聞いたときに彼が一瞬表情を曇らせたのが頭に残っているからだったり。
なによりも、そうだ……
「(どこか、店長は分かっていたような気がする……)」
いつかあの人がここを尋ねに来ることを。
だけどこれらを全て言語化することは難しい。
「お、女の勘です!」
「勘。ね。まあその勘が当たらないことを祈ることね。じゃ、私仕事戻るから」
「あ、私も!」
経験豊富そうな花宮さんに話を聞いてもらったらちょっとは心も晴れるかと思ったけど、やはりこの胸のモヤモヤを晴らすにはもっと時間がかかりそうだ。
休日もいうこともあり、今日の客入りは良好でお昼はフロアも厨房も忙しなくしていたが、三時くらいになるとようやく人の流れが落ち着いた。
「小野ごめん、五番テーブルに注文取りに行ってもらってもいいー?」
「はーい!」
そう花宮さんの指示を受けてハンディターミナルを持ってフロアに出る。
フロアチーフということもあり、お店が忙しい時の花宮さんの捌きようは見ていて尊敬だ。いつか私も彼女のように仕事をしたいものだ。