「(こんなに近く感じるのに、それと同時に遠くも感じる……)」


ずっと好きでいる自信はある。だけど彼に追いつく姿は想像できない。
私が知らない店長がいることは当たり前のはずなのに寂しいなんて、自分勝手だ。


「ありがとう、ございます……」


不意に飛び出した言葉。なにに対してお礼を言っているのかも分からなかった。
ただ一つ、理解できたのは……


『そう思うと瑞希って幸せだね』

『え、なんで?』

『店長って今のところライバルとかもいないんでしょ? だったら恋のいざこざとかなくていいじゃん』


私は今、幸せな恋をしていないということだけ。