「(え、何だろう。今の)」


シフト表を見たけれど誰一人この時間にはまだ上がる人はいないし入る人もいなかった。だからこの時間に更衣室を利用する人はいないはず。それに物音がしたのはいいが、男子更衣室には電気がついていなかった。


「(誰かいる……?)」


私は静かに男子更衣室にまで近寄るとその扉に耳を当てる。
すると奥からゴソゴソと何かが動く音が聞こえて思わず背筋を凍らせた。

や、やっぱり何かいる! どうしよう、泥棒だったら。可能性がない訳じゃなし。
知らないうちに休憩室の窓から忍び込んで従業員の鞄の中から財布などの金属を盗もうとした人は過去にもいると花宮さんに聞いていた。だからかやたらに神経質になってしまう。

誰か呼んできた方がいいのだろうか。店長呼んだ方がいい? いや、でも店長頼りなさそうだよなぁ……
ここに桐谷先輩がいてくれればいいのに、残念ながら彼は今日夜シフトらしいし。

というかこうして誰かを待っている間に犯人が窓から逃げてしまうかもしれない!
私は気持ちを決めるとゆっくりとその扉のドアノブに手を添えた。そしてぎゅっと目を瞑り一気に扉を引いて、更衣室の中に入るとバタンと扉を閉めた。


「うわあ! 締めちゃった!」


間違えた!と私は急いで外に出ようとドアノブをガチャガチャと動かす。