店長は私のことを子供扱いするように笑ったけれど、夏休みがもっと続いてほしいのは平日もお昼からこの店で働きたいからで、店長と長い時間一緒にいたいからだ。
まさかここまでアプローチを受けておいて、そのことに気が付かないだなんて。あまりにも鈍感すぎる。


「小野さん、急に黙り込んでどうかした?」

「いえ、店長がヘタレで格好悪くてよかったなって思っていました」

「え……まあ、否定はできないけど……」


表情やしぐさからも自分に自信がないことを伝わってくる。そういうところがほかの人から見たときに魅力的に映らないのかもしれない。


「大丈夫ですよ、そういう店長のことが私は好きなので」


だから私だけ、店長のことを好きな私だけは自信を持って彼のことを格好いいって思っていよう。




それから数日後のこと。


「じゃ、いつも通り店長によろしく言っておいて」

「店長のことばっか見てないでちゃんと働きなよ」


いつも通り、放課後に光里と彩葉と駅まで一緒に帰り、バイトがある私がそこで二人と別れようとしたとき。
二人は私のバイト先での様子を気にかけているのか、それともからかっているのか。どちらか分からないような言葉を私に掛けてくる。


「余計なお世話だって。お店では私、結構真面目なんだよ」

「真面目な瑞希ってなんか想像つかないね」

「また今度ご飯食べに行くからサービスしてね」


相変わらずちゃっかりしている二人に呆れながら別れて一人バイト先へ向かう。
今日はしーちゃんがシフトに入っていないから私一人だ。ほかのシフトに入っている人はいるんだろうか。