「(店長、あんなに格好いいのに……)」
バイト中、働いている店長のことを盗み見る。背中を丸めながらお店の経理を確認している姿を魅力的に感じるのが私だけというのは不思議な感覚だ。
まるで私だけ他の人とは違う眼鏡をかけているような気持ちだ。
顔も整っているし、背も高い。性格も優しくてしっかりしている。駄目なところを上げるとするならば、いつもよれよれのシャツを着ていてだらしなく感じるところだろうか。
それか周りの人が奇跡的に店長の魅力に気が付いていないとか?
「(このまま誰も店長のことを好きにならなかったらいいのに……)」
そうしたら、私が大人になったときに振り向いてもらえるかもしれない。
それは長い月日が必要なのかもしれないけれど。
「小野さん、背中が熱い……」
「へ?」
事務室のドアの隙間から店長の様子を見つめていると、あまりにも熱視線を送りすぎたからか、呆れた様子で彼が後ろを振り返った。
「なにか用? 手伝うことある?」
「あ、えーと。そうだ、今後のシフトの件で相談があって……」
お店にお客さんが来ないから店長のことを眺めていたなんて不真面目なこと、彼の前では口を避けても言えない。
私は適当に理由を見つけて事務室のなかに入ると店長に近付く。
「そっか、小野さんの学校って進学校だから新学期始まると忙しくなるよね。いつでも相談していいよ」
「私はずっと夏休みでもいいんですけどね~」
「はは、小学生みたいなことを言って」