その日の仕事が終わり、休憩室に戻るとなかにいた瑞希ちゃんと花宮さん私を見て「あ、」と顔を見合わせる。
「ほら、早く聞きなさいよ」
「で、でも~」
二人の会話にはてなを浮かべていると、瑞希ちゃんが意を決したように私のもとへ近づいてきた。
「しーちゃん、あのね……今度の土曜日なんだけど……」
「う、うん……」
土曜日と言えば以前の予定であれば私がシフトに入る最終日だったはず。もしかして送別会の話をしようとしているのだろうか。
彼女の口からそのワードが飛び出す前に私から切り出さなくては。そう口を開きかけた瞬間、瑞希ちゃんの目に涙が浮かんだのを見て思わずぎょっとした。
「み、瑞希ちゃん?」
「やっぱり、やっぱり……」
どうかしたのかと思えば今度は強く私に抱き付いた彼女に驚くを隠せない。
すると、
「やっぱり、しーちゃん辞めないで~!」
「え?」
そう大きな声で私に抱き付く瑞希ちゃん。そんな彼女に後ろで見ていた花宮さんが「やれやれ」と呆れた表情を浮かべた。
「送別会まで我慢するって話はどこに行ったの」
「だってしーちゃんの顔を見たら我慢できなくなって……」
「そうは言ったって雫が辞めるのは変わらないからね」
二人の会話を聞いてなんとなく状況を把握できた。瑞希ちゃんは私の送別会の準備を進めていたけれど、本当は私にここを辞めてほしくなくて、その気持ちをずっと我慢してくれていたんだ。
そんな彼女に対する申し訳なさと同時に何故か嬉しい気持ちも湧き上がってきて、さらに瑞希ちゃんに謝りたくなった。