基本ジョイストのアルバイトは学校終わり、そして八時過ぎにシフトを上がる。
冬は直ぐ外が暗くなるので高校生組や女子は定時よりも早く上がれることも多いらしい。

友人に「またバイト?」と言われ元気に返事をすると大好きな店長が待つジョイストに向かった。
今日こそ桐谷先輩に教わったことを試さなくては! 結局あの日は店長を見つけられなくて休憩時間が終わってしまったから。

おはようございますー、と裏口から入るといつもよくしてくれるパートの従業員の人たちが返事をしてくれる。


「あれ、瑞希ちゃん? シフトまだじゃなかった?」

「楽しみすぎて早く来ちゃいました。何かやることあったら言ってください」

「本当? 助かる~」


パートの田中さんとの会話を終えると着替えるために休憩室に繋がっている更衣室に向かう。
休憩室を覗いてもまだ誰一人来ていなかった。ホワイトボードに貼られてあるシフト表を確認すると私は「げっ…」と思わず声を漏らす。


「(今日あの兄弟も来るのか……)」


二人揃うと毎回騒がしいんだよね。騒がしいのは片方だけだけど。
花宮さんや桐谷先輩はまだ来ていないらしい。それまでは一人か。

まあ、それでも。


「今日も店長に会えるし! 幸せ!」


そう声高らかに言うと、どこかでドンッと何かがぶつかる音が耳に届いた。
私は鈍い音が聞こえてきた方向を見定める。私の勘が鋭ければそれはきっと男子更衣室の方から。