後日、バイトのシフトに入った私は時間を見兼ねて店長に相談を持ち掛けた。


「そう、ご両親の許可が取れたの!」

「はい……なので八月以降も働かせていただきたくて……」


あの夜、リビングにいた両親にバイトを続けたいという話をした。なぜ続けたいのか、自分がどうなりたいのか。私が胸に抱える本音を包み隠さず伝えた。
私がそのような我儘を言うのが珍しかったのか、二人とも最初は驚いた様子だったが、私が無理しない程度であれば勉強との両立を頑張ってみてはと最後には応援してくれた。

一度は辞めると宣言してしまった手前、店長にも相談しにくかったけれど……だけど一度辞めてまた戻ってくる気まずさに比べれば今伝える方がいいと思った。
別の場所でアルバイトを始めることも考えたが、どうしてだかこのお店以外には考えられなかった。短いあいだだったけれど、随分とこのお店に愛着が沸いてしまったようだ。


「本当にすみません、辞めると言ったり続けると言ったり……」

「そんなことないよ、家のことがなかったら引き止めたいと思っていたくらいだし。もちろん今後もご両親が心配しないようにお店の方でもサポートさせてもらうから」

「……ありがとうございます」


突然の相談だったのに快く受け取ってくれた店長に感謝を告げ、仕事へ戻る。
瑞希ちゃんにも早く伝えないとな。私が辞めると言ったとき、すごく寂しそうにしていてくれたし。

彼女がいるであろう休憩室の扉を開けようとした、そのときだった。


「だーかーらー! そのサイズじゃ全員分のメッセージ入りませんって!」


不意に瑞希ちゃんの大きな声が聞こえてきてドアノブにかけた手を止める。
どうやら中には彼女以外の人もいるらしい。私は音を立てないようにそっと扉を微かに開いて中の様子を窺った。

すると中では瑞希ちゃんが高野先輩たちに向かってなにやら指示を出していた。