やけくその割には結構大胆なアドバイスをしてくる。桐谷先輩、大人だ。
でも押し倒してキス……キスかあ。私、ファーストキスまだなんだけど。でもするなら絶対店長がいいし。

頭の中で悶々と考えを巡らせている間、桐谷先輩は知らん顔でふわっと欠伸をする。
しかし貴重な男性意見だ。きっと今後何かの役に立つはず。


「桐谷先輩ありがとうございます。私頑張って言われたこと試してみますね!

「あぁ、どうぞ勝手に。あともう二度と変な絡み方してくるなよ」

「うっ、肝に免じておきます」


でもいつもより桐谷先輩と仲良くなれた気がする! この調子で店長との親密度も高めていきたいところ。
早速店長を探してこようと腰を上げるが、ふと頭を過った疑問をそのまま彼にぶつけてみた。


「先輩って、彼女さんと話すときもあんなに冷たいんですか?」

「は?」

「酷いですよ。きっとあんな冷たい態度取っていたら彼女に嫌われちゃいますよ。そこは店長を見習って……て、え? 何ですかその手は!?」

「煩いんだよ」


振り降ろされた強烈チョップが私の頭に下る。い、痛い。頭蓋骨割れたかと思った。
なるほど、彼女のことになると怒っていたのは単に照れ隠しだったということか。これも肝に免じておかないと。

すみませんでした、と肩を落とすと私は休憩室を後にする。





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「……店長、小野行きましたよ」

「あ、ありがとう桐谷くん。というか俺が更衣室にいたこと知ってたんだ」

「物音がしていたので」

「そういえば桐谷くん、恐ろしい提案を小野さんにしていたような気がするんだけど」

「気のせいじゃないですか?」

「……お、俺今から早退してもいい?」

「アンタ店長だろ」


店長弄りにもう一人追加された模様です。