明らかに花宮さんの発言に動揺する店長を見て、「老け専?」と首を傾げる。
そして後ろに立っている畠山さんの姿を視界に入れると、これまでの店長の行動の理解できなかった点が頭の中で解けていった。


「店長、私が老け専だって言ったから畠山さんのことを好きになるって思ったんですか?」

「……いや、流石にそんなことは考えていないよ」

「でも……」

「考えてないけど、小野さんの考えてることっていつも俺には奇想天外すぎて……」


はあ、と溜息と共に肩を落とした店長の背中を軽く叩く花宮さん。
もしかして、店長が何を考えているのか分からなくて不安になる私と同じで、店長も私のことで頭を悩ませていたのかもしれない。それでもあまりに考えが突飛しすぎて吃驚だが。

だけどそうか、本当に心配することは何もなかったんだ。
店長はいつもの店長だし、私もこれまで通り店長以外の人を好きになることはないのだから。


「ふふふ、店長かーわいい」

「可愛くないから。というか小野さんそろそろ帰ったら?」

「拗ねてる店長も可愛い」

「あーもー、ちょっとだけ一人にさせて」


恥ずかしいのか、髪の毛の隙間から見える耳が真っ赤になっている。それがなんだか嬉しくて、嫌がる店長のことをずっと追いかけまわしてしまった。
私が想像しているよりも歳の差なんて関係ないのかもしれない。このままずっと追いかけていればいつの日か追いつく日がやってくる。私はそれを信じて前に進むだけだ。


「で、あの茶番は一体何ですか」

「ここ最近のうちの名物です。畠山さんも賭けに参加しますか?」

「……遠慮しておきます」


信じて進んだ先に、店長が隣を歩いてくれる未来があることを。