「小野さん、この方はうちの店舗のマネージャーを担当してくれている畠山健さん。本社の社員の人だよ」

「どうも、挨拶が遅れてすみません」


挨拶をしてくれた畠山さんに私も慌てて頭を下げた。本社の人ってことは店長よりも立場が上の人ということだろうか。
ん、いや待てよ。そもそも女性だと思い込んでいた畠山さんが実は男性だったというだけでなんの問題もなくないか? 最初から店長に近付く女性がいなかったというだけで。

私にとって、これってめちゃくちゃいいことなのでは!?


「どうも、初めまして! 春から新しくバイトに入った小野瑞希です! 畠山さんにお会いできて光栄です!」

「いきなり勢いが凄いな」

「というか店長、普通に会わせてくれたらよかったじゃないです! 一体なにを懸念してたんです?」

「え、いやぁ……」


うーん、と歯切れ悪く頬を掻く店長を見ていた花宮さんが「店長まさか」と呟く。
すると彼女が何を言い出そうとしているのかを察したのか慌ててその声をかき消すように大声を出した。


「あー! は、花宮さん、ちょっと来週のシフトで相談したことが。ちょっと来てもらっていい?」

「……まあ、いいですけど」


そう言って花宮さんとその場を去ろうとする店長を逃がすまいと背中のシャツをすかさず掴んだ。


「店長待ってください! まだ質問に答えてもらってませんよ!」

「ぐっ、小野さん手離して……」

「どうして私と畠山さんを会わせないようにしていたんですか!」


見かけによらず頑固な店長はなかなか私の問いかけに口を割ろうとしない。
それを見ていた花宮さんが呆れたように溜め息を吐いた。


「まさか店長、いい歳して小野の老け専発言を気にしていた、なんてことはないですよね?」

「っ……」