「ん?」


眼鏡をかけ、こちらを不思議そうに見つめている小太りのおじさんだった。


「……あれ」


私はあたりを見渡して女性を探すがそこに立っているのは花宮さんとおじさんだけ。
一度固まった思考を動かし、「あ、あのー」と歯切れ悪く尋ねる。


「さっきここに畠山さんがいませんでしたか?」

「畠山なら俺だが」

「あ、そうなんですかー」


さも当たり前のことのように言われ、一瞬流してしまいそうになったところをなんとか食い止める。
待ってこのおじさん、今畠山は俺だって言わなかった……?


「は、畠山さん……ですか?」

「? だからそう言っているだろう」


そこには私が想像する大人でグラマラスな女性はいなかった。


「い、いやいやいやいや! 待ってください! だって花宮さんこのあいだ『大人の女性』だって……!」

「女性とは言ってないでしょ。大人の人って言っただけ」

「えええ、でも桐谷先輩は店長の為にお弁当作ったりシャツにアイロンかけたりして家事が得意だって」

「別に男の人でも家事が得意な人だっているでしょう」


だけど花宮さんと桐谷先輩の話を聞いていたら女性だとしか思えなかった。
というより私が畠山さんを女性だと勘違いし始めたのって光里と彩葉が私に変なことを言ったからだ。あの助言さえあれば私がこんな勘違いをすることはなかったはずなのに。

まさかこんな展開が待っているなんて、頭を抱えているとやっと追いついたのか店長が息を切らしながら私の背後に立っていた。


「お、小野さん、脚早いね」

「て、店長、私……」


私はとんでもない勘違いを……
すると畠山さんが「小野?」と私の名前に反応し、言葉を漏らした。


「あぁ、最近入ってきた仕事ができるバイトってこの子のことですか」

「う、うん。畠山くんが会うのは初めてだよね?」


店長は諦めがついたのか、前に出ると畠山さんのことを私に紹介し始める。