そう言って彼に詰め寄ると私のことを映している瞳が揺れた。
私の強い口調に圧倒されているのか、店長は暫くの間黙ったまま私の顔を見つめていた。

すると、


「……い…」

「い?」

「い、嫌……だ……」

「……」


嫌? 嫌と言ったのか? あの店長が? 自分の意見をなかなか言わないあの店長が?
私に詰め寄られても「嫌だ」と自身の意見を主張した。


「お、小野さん……畠山さんは……」

「……もういいです」

「え?」


彼の言葉に私の中のなにかが切れてしまった。


「店長がそんなふうに職権乱用するんだったら私だって勝手にします!」

「お、小野さん!?」

「あとで後悔しても知らないですから!」


私はそう言って彼の胸に向かって指を差すと大胆に宣戦布告をし、スカートを翻して彼の元を離れた。
店長は呆気に取られているのか、力が抜けたようにその場から動けなくなっているようだったがそれをも無視してフロアへと脚を進める。

店長がその気なら私にだって考えがある。子供を舐めていると痛い目を見ると、彼には身をもって知ってもらおう。




翌日、私はシフトにも入っていないのにバイト先に訪れていた。
理由は一つ、畠山さんと直接対峙するためだ。

私と畠山さんを会わせたくない店長のことだから、畠山さんの出勤日に私のシフトを入れていないはず。
だから今日私がバイトに出たらきっと畠山さんと会える、そういう理論だ。


「あれ、小野? 今日ってシフト入ってないんじゃ……」


堂々と従業員入り口から店内に入り、まずは店長の姿を探す。
あまりにも真剣になりすぎて、途中すれ違った花宮さんの言葉をスルーしてしまうくらいだ。

事務室を覗くとそこにはノートパソコンを向かい合っている店長の姿を見つけた。
よしよし、一人目の対象はここにいた。店長に見つかるとややこしいことになるからなるべく私がここにいることがバレないように行動しなければ。


「(ほかの人にも探りを入れて畠山さんがどんな人なのかも知りたいし……)」

「あ? 瑞希? お前こんなところで何してんだ」


背後から聞こえた声に驚いて振り返ると目を丸くしている紅先輩が立っていた。
しまった、自分のシフトのことばっかりで誰が今日来ているのかを把握できていなかった。