「ついでに桐谷先輩のどこが好きかも聞いておきます」

「おい、調子乗んなよ」

「ひ、ひぃ!? 顔怖い!? 怒らないで下さいよ~!」


顔が整った人が怒るとこんなに怖い顔になるのかとこの時初めて知った。多分桐谷先輩はこれからも怒らせちゃいけない部類だと思う。

だったら彼女のどこが好きか教えてくださいよ!、とビビりながらも言い返すと彼がぐっと後ろに引いた。
なんでそんなに彼女の話をしたくないのかが良く分からない。普通、恋人の自慢とかするの楽しくないのかな。

すると彼は私の淹れた珈琲を飲み干し、深く溜息を吐いた。


「別に、付き合いが長すぎて今更好きとか分かんない」

「そ、そういうものなのでしょうか?」

「そういうものだよ。あと俺は小野が店長と付き合おうが全く興味がないから」

「……それって、別に今のアピール方法でも問題はない、ってことですか?」


私はそう解釈すると彼は「そうかもね」とふと軽く笑みを零した。うわ、格好いい。桐谷先輩の笑顔って凄くレアな気がする。


「なるほど、じゃあもっと効果的なアピールを考えないと。何をすればいいんでしょうか「?」

「適当に押し倒してキスでもすれば? ああいうタイプは既成事実を作った方が早いだろ」

「う、うわー。桐谷先輩、うわー」