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駅のホームへの階段を上りきった時、しまったと思った。
「蒼くん?」
目の前に立っていたのは間違いなく紅の彼女だったからだ。
一瞬の間では自分がどう対応していいか分からず立ち尽くしていると、彼女の方からまさかのアクションが出た。
「蒼くん……じゃないね」
「……」
その言葉に彼女が前々から紅に関して何かしら違和感を抱いていたのだと分かった。
「……そっか、やっぱり私間違えてたんだ」
ホームのベンチに座りながら、いくつかの電車を二人で見送った。
その間に今彼女と付き合っているのは俺ではなく弟の紅であること、そして今は俺に扮して彼女を騙していることを伝えた。
驚くと思っていたが彼女はすんなりとその事実を受け入れた。やはり大学生ということもあって、精神的に大人なのだろう。
彼女は今までずっと感じていた違和感の原因が判明したからか、酷くすっきりした様子だった。
「本当にすみません、弟の嘘に付き合わせてしまって」
「ううん、私が最初告白する人を間違えちゃったのが悪いんだし」
「それでも、やはりその時に伝えるべきだった。それが出来ていたらここまでずるずる引きずることはなかったのに」
もっと兄である自分が強く言えばよかった。むしろこうして彼女に伝えるべきだったかもしれない。
しかしもう全ては手遅れで、彼女には全て伝わってしまった。紅が知らないところで、俺が教えてしまったのだ。