「……まぁ、俺は紅の兄なので。結局は弟に対して甘いんですよ」
そう微笑んだ彼に私は胸の奥がチリッと焼けつけように痛くなった。
私には分からない、兄弟というものが。家族というだけで一緒にいなければいけない対象になるということ自体が。
私には、分かりたくもない感情だから。
「私も、紅先輩にはこのまま嘘をつき続けて欲しくないって思ってます」
「……」
「だから! 私も説得付き合います!」
そうやる気を見せると蒼先輩は驚いた顔をしていたが、直ぐに笑って「ありがとうございます」と感謝の言葉を口にした。
それを見て蒼先輩も紅先輩のことが好きなんだということが分かり、凄く安心したことを覚えている。
私たちはその後も二人の尾行を続け、彼女さんがお手洗いで席を外したところで視線を合わせるとベンチに座って待っている紅先輩の元へと向かう。
「紅、ちょっと話があるんだけどいいかな」
「っ……あ? 何でここに……つーか瑞希も」
「話、聞くでしょ?」
「……」
隣に立っていた私でも分かる蒼先輩の怒りのオーラに流石の紅先輩も文句を言えなかったのか、彼女さんに連絡をすると私たちは彼を連れ出した。
「こんなとこに連れてきてなんなんだよ、早くしねぇとアイツ帰ってくんだろ」
「紅、いつまでこんなことを続けるつもり?」
「っ……」
気まずそうに視線を逸らす彼は下唇を噛み締めながら「俺だって」と、
「俺だって、続けたくてやってるわけじゃねー。そろそろ言わねぇって思ってるし」
「じゃあ言えよ」
「そ、蒼先輩……」
めちゃくちゃいい笑顔でその一言は辛いです。この人本当に紅先輩に対してだけは容赦がないな。
しかしそれで黙り込んでしまった紅先輩に兄である彼はふぅと溜息を吐く。
「紅の気持ちは分かってる。そういう環境に置いてしまったのは俺だからね」
「……分かるわけねえだろ」
「分かるよ」
「いーや! 分かんねえ! 何でも出来るお前には分かんねえ!」
そう言って顔を上げた紅先輩は一瞬にして距離を詰めると蒼先輩の首元に掴みかかった。
慌てて引き剥がそうとすると「邪魔だ」と振り払われて、私は掴み合いになっている二人の姿をただ見つめることしか出来ない。
そう微笑んだ彼に私は胸の奥がチリッと焼けつけように痛くなった。
私には分からない、兄弟というものが。家族というだけで一緒にいなければいけない対象になるということ自体が。
私には、分かりたくもない感情だから。
「私も、紅先輩にはこのまま嘘をつき続けて欲しくないって思ってます」
「……」
「だから! 私も説得付き合います!」
そうやる気を見せると蒼先輩は驚いた顔をしていたが、直ぐに笑って「ありがとうございます」と感謝の言葉を口にした。
それを見て蒼先輩も紅先輩のことが好きなんだということが分かり、凄く安心したことを覚えている。
私たちはその後も二人の尾行を続け、彼女さんがお手洗いで席を外したところで視線を合わせるとベンチに座って待っている紅先輩の元へと向かう。
「紅、ちょっと話があるんだけどいいかな」
「っ……あ? 何でここに……つーか瑞希も」
「話、聞くでしょ?」
「……」
隣に立っていた私でも分かる蒼先輩の怒りのオーラに流石の紅先輩も文句を言えなかったのか、彼女さんに連絡をすると私たちは彼を連れ出した。
「こんなとこに連れてきてなんなんだよ、早くしねぇとアイツ帰ってくんだろ」
「紅、いつまでこんなことを続けるつもり?」
「っ……」
気まずそうに視線を逸らす彼は下唇を噛み締めながら「俺だって」と、
「俺だって、続けたくてやってるわけじゃねー。そろそろ言わねぇって思ってるし」
「じゃあ言えよ」
「そ、蒼先輩……」
めちゃくちゃいい笑顔でその一言は辛いです。この人本当に紅先輩に対してだけは容赦がないな。
しかしそれで黙り込んでしまった紅先輩に兄である彼はふぅと溜息を吐く。
「紅の気持ちは分かってる。そういう環境に置いてしまったのは俺だからね」
「……分かるわけねえだろ」
「分かるよ」
「いーや! 分かんねえ! 何でも出来るお前には分かんねえ!」
そう言って顔を上げた紅先輩は一瞬にして距離を詰めると蒼先輩の首元に掴みかかった。
慌てて引き剥がそうとすると「邪魔だ」と振り払われて、私は掴み合いになっている二人の姿をただ見つめることしか出来ない。