翌日、休日なのに珍しくシフトがなかった私は彩葉たちと外で遊んでいた。
買い物を済ませた後、どこかのカフェで一休みしようと歩いていると、私は途中で見覚えのある横顔を視界に隅に発見する。
「(あれって、もしかして紅先輩と……)」
そう立ち止まっていると前から光里が「どうしたの?」と声をかけてくる。
「早く行かないとカフェ混むよ?」
「え、あ……うん……」
しかし頭の中はこのあいだの紅先輩のことで一杯になってしまい、正直今から甘いものを食べる気分ではなくなってしまった。
私は彼女たちに「ごめんなさい!」と勢いよく頭を下げると、
「ちょっと用事思い出したから私はここで!」
「え、瑞希!?」
「おーい、どこに行くんだー?」
彼女たちに別れを告げると私は慌てて紅先輩たちが歩いて行った方向へと走り出した。
すると間違いなくあれは紅先輩の姿で隣にいたのは例の彼女さんだった。
「(あんだけ悩んでたのにやることはやってるじゃん……)」
しかも私たちには見せないような幸せそうな顔をしちゃって。
しかし彼女さんの隣に立つ紅先輩の姿は本当に彼女のことが好きなんだって分かる。だってあんな優しい顔、初めて見たから。
紅先輩は好きになった人には凄く優しそう。それは何となく前から気が付いていた。
多分その優しさが、今は彼を苦しめているんだろう。
でもそれを言ってしまったら、今度は彼女のことを苦しめてしまう。
だから彼は言えないんだ。自分が蒼先輩ではないってことも、
そして彼女と付き合った理由も。