桐谷先輩は、無愛想。いつもへらへらとしている店長とは正反対。だとしたら桐谷先輩に店長のことを聞くのは間違いだったかもしれない。
だったら話題を変え、桐谷先輩について聞いてみよう。


「桐谷先輩が可愛いと思うってどんなタイプの女の子ですか？」

「……は？」


彼は一瞬怪訝な顔をした後、「本当何なの」と低いトーンで呟いた。どうして好きな子のタイプを聞いただけでこんな嫌そうな顔をされるんだろうか。
いや、でも待てよ。前に一度花宮さんから話に聞いたことがある。


「(確か桐谷先輩って……)」


私はその事を思い出し、黙っている桐谷先輩に再度質問を投げ掛けてみた。


「桐谷先輩って彼女さんいるんですか？」

「っ……ごほ、は？」

「だ、だだだ大丈夫ですか！？」


私の言葉に盛大に噎せた桐谷先輩は鋭い視線をこちらに向けた。まるで絶対零度並みの冷たさを感じる視線だ。


「お前、本当に何なの」

「か、彼女の話で噎せるとは思わないでしょう！？」


まさかのクリーンヒット。こんなに彼女の話が彼を動揺させるとは思ってもいなかった。ポーカーフェイスなのは変わらないが少し桐谷先輩の人間らしいところを見た気がする。
でも桐谷先輩の彼女かー。きっと花宮さんレベルの美人で、大人っぽい人なんだろうなあ。