「いいの!?」

「お、おう……どうせバイト休みだしな」

「嬉しい! 楽しみにしてる!」


嬉しそうにはしゃいでいる茅乃は少なくとも俺よりも年上の女とは思えない。
だけどそんな無邪気さは嫌いではなかった。現にいいやつすぎるし。

駅に着くと改札の前で暫く雑談をして別れるのが俺たちの一般的な過ごし方だ。


「じゃあまた時間とか連絡するわ」

「うん、バイバイ」


蒼くん、と改札越しに叫ばれた名前に一瞬戸惑いつつも笑って手を振り返した。
いつまでこの関係を続けるんだろうか。しかし本当のことを口にするのは怖い。

蒼がいなければ、俺は誰にも必要とされない人間のように思えて、怖い。


「(むしろアイツがいなければ、こんなことにはなってないのかもしれないな)」


せめてただの兄弟ならいいのに。どうして同じ日、同じ時間に生まれてしまったのか。

蒼がいる限り、俺は誰の一番にはなれない。