そんなこと出来るはずがなかった。俺の勉強に付き合えばその分蒼自身の勉強が出来なくなる。
となると彼は志望校に受からない可能性が広がってしまう。

こう言えば直ぐに諦める、そう思っていたが彼から返ってきたのは思いもよらぬ返事だった。


「本当? じゃあ俺が教えるよ」


淡々と答えた彼にワンテンポ遅れて反応する。


「……お前、マジで言ってんの?」

「やっと紅がやる気になってくれたみたいだしね」

「自分の勉強は大丈夫なのかよ」

「大丈夫じゃないよ」


全く表情を変えずに教科書を開き始める蒼を見つめる。


「紅は本当は出来るやつなのに、自分で自分の可能性を諦めてる。それが許せないから。だから俺は紅を何としても自分と同じ高校に受からせる」

「……は、お前と同じ高校って。いやいや、流石に無理があるだろ」

「確かに流谷は今からは無理だから、ちょっとランクを落として……斗南か清水辺りかな」

「いや、それでもちょっと」

「何? 俺をまだ下の学校に通わせる気?」


彼はにっこりと微笑んだが目だけはどうしても笑っていなく、その言葉に俺は「はい……」と返事するしかなかった。
こうして三年の夏頃から蒼のスパルタ教育によって何とか県でも中の上の高校に受かり、無事両親は俺が高校生になれることに安心した。

ちなみに蒼はその高校に余裕で受かり、しかも主席入学まで果たした。