店長の空気が変わったのはいつぐらいからだろうか。確か太田と会った時は完全に向こうの勢いに押されてきた気がする。
そうだ、全部太田が悪いんだ。太田が適当なことを言うから。だから私も思わず声を上げちゃって。


『はい、俺はただ瑞希のことが好きなだけです!』


……もしかして、


「ヤキモキだったり……」

「っ……」

「わ、ぁ!」


私がボソリと呟いた言葉に動揺したのか車体が一瞬左右に揺れた。直ぐに進路を正すと何事もなかったように運転を再開する。
しかし運転席に座る店長の顔は首まで赤く染まっていた。


「て、店長……」

「……ち、ちち、違うからね。本当に」

「あ、はい……」


いや、運転ミスするくらいに動揺しているのに今更何を誤魔化そうとしているのだろうか。
しかし私も私で彼の予想外の反応に顔が赤くなってしまうんだけど。

まさかだよね、店長みたいな大人の人が……


「……あ、今の角曲がるんじゃなかったですか?」

「……」


店長のことはよく分からない。だけどそれは私が難しく考えているだけなのかもしれない。
店長だって、私たちと同じ人間で、男の子なんだ。

帰り道は行きよりも多く時間がかかった。