店長は私と太田の掛け合いを眺めながら戸惑いながら頰を掻く。


「仲良し、なんだね?」

「え!? 全然違います!」

「ありがとうございます!」

「何いい笑顔で感謝してんのぉ!?」


ますます誤解を生むでしょうが! 今度は私から太田の腕を掴んで「ありえないんだけどぉ!」と逆上する。
このまま放っておくと更なる誤解発言が飛び出そうだ。とにかく今は太田から店長のことを遠ざけないと。


「店長! 先に行っててもらっていいですか。私ちょっとコイツに説教を……」


そう言葉を続けようとしていた時、太田に伸ばしてきた腕と反対の方を後ろに引っ張られた。
え?と振り返ると私の腕を掴んでいる店長と目が合う。

見たことないような、黒だった。


「そろそろ帰らないと桐谷くんに怒られるよ」

「……は、はい」


落ち着いた声でそう制した店長の表情は何処か怒りを含んでいるように見えたが私は何も言えなかった。
私は「ほら、行こう」と腕を引っ張る店長に連れられながら振り返って棒立ちの太田に声を掛ける。


「じゃあね! アンタ本当口に気をつけなさいよ!」


しかし太田がその言葉に頷く前に私たちは彼の前から姿を消してしまった。
レジの前まで来ると店長は私の腕から手を離す。そして後ろのポケットから財布を取り出すと材料の支払いを始めた。