「な、なんか俺めちゃくちゃ見られてない?」

「店長とドライブデート嬉しいなって」

「え、えぇ!? デートじゃないから! 普通にお仕事だよ!」

「もー、そんなに必死に否定したら逆に怪しいですよ?」

「そんなぁ……」


こんな私の言葉にタジタジになるのも、大人だから私に付き合ってくれているのかもしれないとたまに思う時がある。
だけど店長のことを疑いたくもないから、私は彼に言われた言葉をそのままの意味で受け取っている。

店長は、本当に今の店長の顔が素顔なのかな。


「着いたよ、ここね。桐谷くんからメモ預かってるから」


お店近くのスーパーに着くと車を止め、私たちは店内に足を進める。桐谷先輩が書いてくれたメモを頼りに買い物を進める店長の後ろを追いかけた。


「えっと、小麦粉か」

「あ、私それさっき見ました!」

「ほんと? じゃあ持ってきてもらっていいかな?」

「了解です!」


お任せください!と敬礼するとカートを彼に任せて私は今来た道を戻っていく。
なんかこれって新婚さんみたいじゃない?と一人テンションが上がってニヤケが止まらなくなる。あとでこのことでからかってあげよっと。

紅先輩と喧嘩したことさえも忘れて気分良く次の棚を曲がった時だった。
曲がり角から現れた人影に気付かずに私はその人と肩をぶつけてしまう。


「わ、すみません」


彼が手に持っていた食材が床に広がる。それを謝りながら拾っていると私は思わず動きを止めた。


「は、太田?」


顔を上げるとそこにいたのは同級生の太田の姿だった。