「分かりました、じゃあ小野も連れてってください」

「やったー!」

「小野、貸しだからな」

「か、貸しとは?」


桐谷先輩に貸しって、なんだか嫌な感じがするのだけど大丈夫だろうか。
でもこれでまだ暫くは店長と一緒に居られる〜!

桐谷先輩が休憩室を出て行ったのを見届けると店長が「じゃあ」と私の方を向く。


「早速行こっか、駐車場に車停めてあるから先行ってて。財布持ってくる」

「っ……」


わ、なんか、これは! なんかこれは!!


「(ドライブデートみたい!)」


先に駐車場に降りた私は店長の黒い車の近くで彼がやってくるのを待っていた。
たまに夜遅い時とか車で駅まで送ってもらうことはあるけれど、こうして駅じゃないところに二人で行くのって初めてだな。付き合ったらこういうのが普通になるのかな。

キャー!と一人で盛り上がっているとやってきた店長が「大丈夫?」と私の頭を心配した。
早速乗り込むと彼はエンジンをかけて車を動かした。


「多分小野さん一人で行くときは自転車になるだろうから道順気を付けてね」

「えー、店長も一緒に行きましょうよ」

「俺はほら、忙しい時もあるから」


助手席からそう話している店長の姿を観察する。帰りに送ってもらっている時も思ったけど、店長って車を運転していると「本当に大人なんだな」って思う。
ハンドルを握ると骨ばった手とか、真っすぐを見つめている視線とか、普段のヘラヘラした様子はなくて格好いい。

バイト先のみんなは「どうして店長なんか好きなの?」って言ってくるけれど、普通にこういうところ見たらキュンってしないものなのかな。