「店長、こんなとこにいた……」


休憩室に入ってきた桐谷先輩が泣いている私を慰めている店長を見て、気まずそうにドアを閉める。
自分が私を泣かせたのではないかと思い込んだ店長が慌てて彼を引き留める。


「待って! 無言で閉めないで! 誤解だから!」

「仕事場でそれはちょっと……」

「桐谷くん! 前から思ってたけど俺に対してあんまり信頼とかないね!」


まあ、という返事に店長がショックを受けたところで桐谷先輩は再び休憩室の中に入ってきた。


「買い出しお願いしたいんですけど、暇そうなんで」

「け、決して暇では」

「女子高生と戯れる時間はあるみたいなんで」

「……」


どんどん店長の顔の血色が悪くなる。こんなにもアルバイトに強く出られない店長いるんだろうか。
私はそんな店長を見かねて桐谷先輩に向かって「はいはい!」と手を大きく上げた。


「私も行きたいです! 買い出し!」

「却下、別にそんな人いらん」

「いいじゃないですか! 私まだ休憩時間あるし!」

「お前のやることにはいちいち下心が見え見えなんだよ」


協力してやる気も失せるわ!、と言われてしまい、私は一人ショボンと肩を落とした。
そんな私に店長が「まあまあ」と、


「小野さんまだ買い出しとか言ったことないし、一度経験しておくのもいいんじゃないかな! 次は小野さんに頼むこともあるかもしれないし」

「店長!」

「それに車で行けば直ぐだしね。そんな時間も掛からないから休憩が終わるまでに戻って来られるよ」


なるべく争いごとを無くしたいからか、店長の必死の説得に不審な目を向ける桐谷先輩。
しかし彼もこんな時間が無駄であることに気が付いたのか、はぁと溜息を吐いた。