と、


「隣まで声聞こえてるけど大丈夫……」


突然扉を開けて入ってきた店長は私たちの険悪な雰囲気を見て「え」と言葉を漏らして固まる。
店長の姿に紅先輩は舌打ちをすると一人だけ更衣室に向かっていった。

残された私におずおずと近付く店長は心配そうに顔を覗き込んだ。


「小野、さん? どうしたの? 何かあった?」

「っ……」

「ん?」


きゅっと口元を閉じて上を向くとそんな店長と目が合った。


「私、間違ってますか!?」

「小野さん?」

「……どうして、誰も私のこと……」


私の存在を……

そこまで言い掛けて我に返ると握っていた彼のシャツから手を離す。
こんなこと言ったらまた面倒臭い子だと思われてしまう。


「すみません、何もないです」

「そ、そう?」

「あれもこれも、店長が全然私に構ってくれないのが悪いんですよ!」

「えぇ、いきなり飛び火!」