「いいですか!? 私が好きなのは店長です! 紅先輩みたいに口が悪くて頭も悪くて気遣いも出来ない人なんかじゃないです?」

「じゃあ何だ? あのおっさんに全然構ってもらえないから彼女がいる俺に八つ当たりしてんのか? ハッ、笑えるー」

「ぁあぁあぁあぁ!?」


誰か、この男を止めて! じゃないと私が彼の息の根を止めてしまう。
ここ最近バイト先で人の目を憚らずにイチャイチャイチャイチャとする姿を見せつけられてイライラがMAXになっていた私のパラメータがついに吹っ切れてしまったようだ。

そうですよ! 私はここ最近全く店長に構ってもらえずにくすぶっているのに、何故嘘をついて付き合っている紅先輩の方が上手く行っているのだろうって毎日鬱憤が溜まりに溜まっているんですよ!
ていうか店長も店長でなんか忙しそうにしているし、会っても「また後でね」と頭を撫でてくれるだけだし(そして「また後でね」の"後で"はない)。

要するに欲求不満だ。

するとテーブルに置かれていた紅先輩のスマホがピコンと音を鳴らした。
それに目を光らせた私は彼がスマホに触れる前にそれを奪い取る。


「嘘までついて付き合ってるなんて、どんな会話をしてるか私が見てあげますよ」

「あ、おい!」


紅先輩から奪い取ったスマホでLINEの内容を確認するとそこには「今度いつ会える?」なんて交際している男女の定番会話が繰り広げられていた。
しかしそんなことよりも私が気になったのは会話以外のところだった。


「は?」


思わず指の動きが止まる。