ここで働いて以来、大事件が起こってしまった。
なんとあの我儘で横暴な紅先輩に年上の彼女が出来てしまったのだ。

それからというものの、お店の雰囲気は少し変わってしまった。


「気持ち悪い……」


私は目の前の席に座る紅先輩のニヤケ顔を眺めて言葉を漏らす。
するとそれが耳に届いたのか、「あ?」という声と共に鋭い眼光が突き付けられた。


「今なんつった?」

「何も面白いことないのにニヤニヤニヤニヤニヤニヤ気持ち悪いって言ったんですよ!」

「あぁ!? てめぇ、馬鹿にしてんのか!?」

「さっきから鼻の下伸ばしすぎなんですよ! ここバイト先ですからね!」


何故か紅先輩と休憩が一緒になってしまった私はそう彼に喚き散らす。先程から視界に入る彼の表情が鬱陶しくて休憩も出来ない。
多分彼女関係のことを考えているのだろうが、何故語ってもいないのに雰囲気から惚気られているように感じてしまうのだろうか。


「とにかく、イチャつくなら家でやってください!」

「何だよ……あ、もしやお前嫉妬だな?」

「はぁあぁあ!?」

「俺様が他の女に奪られたのが悔しいんだろ! お前毎回俺につっかかってくると思ったらそういうことかよ……」

「紅先輩って本当に馬鹿ですかぁあぁ!?」


何がどうして私が紅先輩なんかを好きだという結論に行き着くのだろうか。
思わずヒートアップしてテーブルを叩いて立ち上がった私は彼の顔に指を突き立てる。